2015年6月8日月曜日

十八史略(68)-伍子胥と呉越戦争(29)

春秋時代の中国
 21年前、会稽に包囲された勾践は、その身を殺され、国土を奪われるところまで追い詰められ、夫差の温情で救われた。いま、その返しとして、夫差を救ってやってもよいのではないか。

このとき、范蠡は立ち上がっていった。

「会稽のことは、天が越を呉に与えたのに、呉王夫差が天に逆らって受け取らなかっただけですぞ。いま天が呉を越に賜うのであります。天に逆らえるでしょうか?ごらんなさい、21年前、天に逆らった者の運命が、目の前にございます」

「むごいことよのう」

越王勾践は呟いた。

范蠡はかまわずに太鼓を打った。

「講和は拒否された。呉の使者よ、早々に立ち去るがよい」

呉の使者公孫雄は泣いて去った。

「わしはせめて夫差の命は助けたい。そのかわり、呉の国はのこさぬことにする。どうじゃな」

「夫差をどうなさいます?」

「舟山の小島に流し、漁村の村長ぐらいにすればよかろう。あそこでは、兵を集めることもかなわぬはずじゃ。いまの夫差の苦しみ、わが身にかんじるぞ」

「夫差を舟山の島で、百家の長にする。しかし、夫差がそれを受けますかな?」

「受けるほかはなかろう」

「私は受けないと思います」

 

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