2013年12月20日金曜日

原子力損害賠償法の見直し

 原子力損害賠償については現行制度に問題があるのは誰の目にも明らかです。
 東京電力に責任が集中し、青天井の賠償を負うことになっています。その半面、真に補償が必要な被災者に十分な補償が行き届かず厳しい批判を浴びています。政府は足りない資金を東電に貸すだけです。
 
 1961年に原子力損害賠償法が制定される過程では別の考え方があったようです。
 
 法案作成に関わった民法学者の我妻栄氏(東京大学名誉教授、故人)らは、事業者が手に負えない損害は国が補償にあたるべきだと提案していました。

 原子力利用の利益は国家にとって大きいが、万一の損害も巨大になります。したがって「政府がその利益を促進する必要を認めてこれをやろうと決意する場合には、被害者の1人をも泣き寝入りさせない、という前提をとるべきである」(ジュリスト611015日号)と我妻氏は記しています。

 我妻氏らの提案が通らなかったのは大蔵省(現財務省)の反対があったからだそうです。「50年前の議論に戻るべきだ」と賠償問題に詳しい下山俊次・日本原子力発言参与は話します。

 政府は10月末、原子力賠償に関する国際条約への加入を決めました。国境を超える存在に対応する原子力損害補完的補償条約(CSC)です。加盟国が資金をプールして損害賠償に備えるものです。

 日本では大事故は起きないとの思い上がりから政府は締結を見送ってきた。締結するとワリカン負けすると思ったのでしょうが、入らざるを得ないことになっています。

また今後、原発輸出を進めるなら、自ら条約に入らないと具合が悪いとの判断が背景にあるようです。これも大きな方針転換です。

 条約批准には、当然国内法の改正も必要になります。これを機に賠償制度を原点に戻す議論をすべきだという声が大きくなっています。

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