2012年10月5日金曜日

海外移転を急ぐな


日本国内で生産していたのでは、採算が合わず、生き延びられないというのが、常識になっていますが、どうやらこれはあらためないといけないようです。

ハーバード大のゲイリー・ピサノ教授らは今春、危機感あふれる論文を発表しました。製造拠点の海外移転によって、優れた製品を生む能力が弱まり、バイオ、航空宇宙、医療機器などの重要分野で米国の優位性が脋かされていると警鐘を鳴らしました。
「米国は脱工業化でも生き延びられるという仮説を検証してきたが、いますぐ、この実験をやめなければならない」

海外移転が日本の競争力などに及ぼす影響を、企業も国も立ち止って考える時だろうと産経新聞のコラムニストの平田育夫氏は書いています。
「国内の製造技術が競争力を失うなら悲劇だ。バイオ医薬品、ナノ素材、有機EL、超微細加工品などのハイテク分野では『製造工程の技術革新が活発で、それが製品に影響を及ぼすので、製造部門と研究開発部門の連携が重要』と指摘。製造部門も国内に持つべしと説いています。

開発と製造の様々な部署間の密接な連携・調整が「なお多くの日本の現場の持ち味」とみるのが藤本隆宏東大教授です。
競争力のあるものを生むためにも、調整能力の高い開発、製造の現場を残すよう訴えています。日本は資源など多くを輸入しなくてはならない。その外貨を得るため国内総生産(GDP)15%程度の輸出は今後も必要」と指摘しています。

雇用の創出でも頼りになるのは結局、製造業というのが、オバマ米政権の結論でした。製造業の国内回帰を促すため法人税減税を掲げています。

特徴ある製品の開発ブランド戦略で付加価値の高い製品を輸出できれば、国内生産でも引き合います。
富士重工業のスバル車が好調で、8月の米国での販売台数は前年同月比36%も増えました。小売りの値引きは1台平均800ドルで他社の3分の1で、無理な値引きをせずに済んでいます。
高い安全性や振動の少ない水平対向エンジン、四輪駆動などの技術を裏付けに、安心でたのしい車を目指して差別化を徹底した結果」と受け止めています。
わたしもトヨタからスバル・レガシーに乗り換えましたが、本に書かれた「運転が楽しい」というフレーズでした。販売総数の8割弱を国内で生産しています。
MPUで圧倒的な競争力を誇っている米インテル社では、75%が国内生産です。
独メルセデス・ベンツは、昨年の乗用車の世界販売の70%を国内で生産しました。日本の自動車業界全体の国内生産は38%です。

経済同友会は、不得意なブランド戦略などを強化するため、外国の人材を獲得したらどうかと提言しました。
しかし、先に、その方向へ踏み出したのが韓国の起亜自動車です。独高級車アウディの主任デザイナーだったペーター・シュライヤー氏をスカウトしデザインを一新しました。その効果はてきめんで昨年の米国販売は前年比36%増でした。

国内生産の魅力を高めるため政府の後押しも必要です。先述の深尾教授は法人税減税や自由貿易協定、そして「国際通貨制度を改革し、安すぎる人民元などを妥当な水準にする」政策を提唱しています。
しかし、なんといっても円高の是正は必要でしょう。1ドル100円程度には、しなければと思います。

0 件のコメント: