2011年11月14日月曜日

超円高を克服する発想

 「失われた20年」を経験した日本は欧米より20年早く「先進国病」を患いました。この間、日本は不況脱出のために積極的な財政金融政策を採り続けましたが、名目GDP(国内総生産)は逆に減少しました。

「もはや伝統的なケインズ政策は効かなくなった。欧米経済もこれからの日本と同じ道をたどる可能性が高い」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏は、語っています。

これは、産業革命以来、西洋資本主義が成長の源としてきた「世界のフロンテイア」が消滅したからです。戦後の覇権国アメリカは、グローバル資本が自由に国境を越えて流通することが可能な「金融空間」という新たなフロンティアを創り出すことに成功しました。このような「金融空間」の創造によって、アメリカは世界の資本を呼び寄せ、成長経済を維持することに成功しました。

しかし、アメリカに富をもたらして来た「金融空間」もリーマン・ショックで崩壊しました。その結果、いまや、先進国にとっての「成長のためのフロンティア」は消滅したことになります。これが、先進国低迷の根本的原因です。

世界の金融市場は激震を続ける中で、日本は超円高に見舞われています。円の対ドル・レートは、第二次大戦後の国際金融秩序を定めたブレトンウッズ協定以来、360円から76円台へと、実に47倍にもなりました。

日本のような巨額の国家債務を持つ国の通貨でも、ユーロやドルよりも信用できるということになっているわけです。日本が「債権国」であるという単純な事実の反映でもあります。

中谷氏は、「円高は当分続くと見なければなるまい。超円高に直面して日本は何をすべきなのか。

1は、円高を悲観するのではなく、これを積極的に活用する発想を持つことだ。欧米経済の深刻な状況を考えれば、多少の為替介入や日銀の量的緩和政策で為替レートを円安に戻すことなど、ほとんど不可能に近い。円高をとことん活用するという考えに転換すべきであろう。

日本の経営者もそろそろ本格的にグローバル経営に乗り出す腹を固めるべきときが来たのだと思う。

2は、高齢化社会先進国である日本は、医療・介護・福祉・教育・文化・などの分野で最先端の商品・サービスを開発するという発想を持つことだ。

従来、自動車・家電など若者向け輸出商品の開発に集中してきた。日本企業の経営努力を、高齢者向けの商品・サービスの開発に振り向けのである。これによって、世界に先駆けて日本が高齢化社会の先端産業モデルを創りあげ、それを日本の競争力の中核に据えるのである。

3に、すでに多くの識者が強調しているところであるが、環境技術や再生エネルギー技術に磨きをかけ、日本が世界になくてはならない国になることだ。

いずれも、決して日本人にできないことではないと思う」と結論づけています。

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