2010年5月30日日曜日

名門レナウン、中国企業の傘下に

 経営再建中の名門の大手アパレルメーカーであるレナウンが、中国の繊維大手の「山東如意科技集団」の傘下に入ることになりました。
 2010年5月24日、レナウンは、中華人民共和国山東省済南市(山東省の省都)にある繊維会社である山東如意科技集団有限公司との間で、資本業務提携契約を締結しました。そして、2010年7月29日開催の臨時株主総会で承認された後、7月30日に、山東如意科技集団に対して約40億円の第三者割当増資を行い、同社が投資ファンドのネオラインホールディングス(24.87%保有)を抜いて筆頭株主(41.18%出資)となる予定です。また、取締役のうち3名は、山東如意科技集団が指名する者になります。
 レナウンの北畑稔社長は、24日の記者会見で「高い成長が見込まれる中国市場を重点マーケットと位置付けている。提携を機に、新たな市場に乗り出したい」と今回の提携の狙いを話しました。また、山東如意の邱亜夫董事長も「レナウンは100年の歴史を持つ国際的に一流の企業。販売力があり、国際的なブランドも持っている」と述べ、中国での協力を約束しました。
レナウンは、創業者の佐々木八十八が、1902(明治35)年に大阪で衣料品の販売を手掛ける「佐々木商会」を設立しました。その後、繊維商品の製造も手がけるようになり、1923(大正12)年から、その前の年にイギリスの皇太子エドワードが来日した時の御召艦レナウン号にあやかって、「レナウン」を商標に登録しました。また、グループ内のダーバンも、供奉艦としてレナウン号に同行していた巡洋艦ダーバン号の名をとって命名されています。
 レナウンは婦人・紳士服の有名ブランドを持つ老舗で、グループの従業員は約1600人。デフレが長引く中、百貨店を主な販路として高級品を扱ってきたのが裏目に出ました。本社ビルを売却しリストラを進めましたが、4期連続の赤字で、再建は難航していました。レナウンは、中国企業の傘下に入る日本企業としては、最大規模です。
 1960年代より、若い女性向け衣料品メーカーとして人気を博しました。NETテレビ(現:テレビ朝日)の「日曜洋画劇場」でCMを放送し、小林亜星作曲によるCMソング「レナウン娘」と「イエイエ」で、弘田三枝子が歌った「ワンサカ娘」のプロモーションは、日本で初めて日本国外のCM作品賞を受賞しました。このCMソングは今でも歌うことが出来ます。
 一方の山東は総合繊維メーカーでしたが、国営工場から民営化して急成長しました。山東は、レナウンのブランド力を評価し、商品管理や顧客対応のノウハウを得るために買収を行ったといいます。
 中国からの企業買収は昨年あたりから少し目立っています。家電量販店やシステム開発、機械加工、自動車部品メーカーなどで行き詰まった会社が多いのですが、日本からの投資額に比べればまだ比較にならないくらいに少ないものです。
 海外から日本への直接投資残高は2009年末で国内総生産(GDP)比4・1%(19兆6千億円)にとどまり、主要国でも最低レベルです。政府の国家戦略室は、対日直接投資残高を20年までに2倍超に増やすことを検討中ですが、絵に描いた餅になりそうです。企業も日本市場を相手にしていては、商機がないと分かっていながら、相変わらずぬるま湯に浸かっています。これは、繊維業界に限らず、多くの業種で言えます。将来の日本のこどもたちのためにもうひと頑張りしましょう。

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