2010年2月9日火曜日

横綱審議委員会

 横綱審議委員会は、横綱の権威を保つために横綱免許の家元である吉田司家ではなく、相撲に造詣が深い有識者によって横綱を推薦してもらおうということになり、1950年4月21日に発足しました。
横綱審議委員は、理事長からの委嘱を受けて就任します。現在の委員の定数は、7名以上15名以内、任期は1期2年、最長で5期10年までとなっています。委員長は、委員の互選によって決定します。委員長の任期は1期2年、最長で2期4年までとなっています。新聞社の社長やNHK会長など、マスコミのトップに委嘱することが多く、八百長問題など大相撲に批判的な報道を封じ込める作戦であるとして、しばしば批判の対象となっています。
 委員に対する報酬はなく、毎場所千秋楽翌日の定例会と、東京での場所前に年3回ある稽古総見と場所総見後に食事の接待があるくらいです。稽古総見以外での観覧は、各自切符を購入して入場します。国技館では正面の審判長のすぐ後ろにたまり席があるため、テレビ放送にしばしば映ったりしています。
 近年の制度改正により、就任時期にかかわらず委員の改選時期は、委員本人が自己都合により途中退任する場合を除き、任期完了となる年の1月であることが明確化されました。これにより、手厳しい意見で知られていた小説家・内館牧子も、任期10年となった2010年の1月で委員を退任しました。
理事長が横綱昇進を諮問しながら、横審により横綱昇進を見送られた例が4度あります。1954年5月栃錦、1968年5月玉乃島、1969年11月北の富士、1994年9月貴ノ花の4人ですが、その4人全員がその後横綱に昇進しています。貴乃花などは、人気もあり、相撲協会は横綱にしたかったのですが、横審は早いとして、認めませんでした。結局、2場所連続の全勝優勝で横綱になったと思います。しかし、それ以降は、優勝、もしくはそれに準ずる成績で横綱になれるようになっています。
 近年では朝青龍の度重なる品格を損なう行為やトラブルだけでなく、ささいな行動にも苦言を呈する委員が多くなっていました。特に内館牧子氏以降は相撲内容などではなく、朝青龍という力士自体を否定するあるいは嫌う人物が相次いで委員に就任しています。一方、白鵬については、成績に関係なく、相撲内容を手放しに誉める傾向が強くなっています。白鳳、善役、朝青龍、悪役のイメージが定着しました。象徴的な例として、2009年秋場所前に白鵬が全日本プロレスの試合を観戦した際、場外乱闘でTARUにチョップをしたことについての問題は、全く取り上げませんでした。朝青龍に対しては、秋場所の千秋楽にガッツポーツを槍玉に挙げており、2009年1月場所の千秋楽の際のガッツポーズの問題があります。澤村田之助は、「山田洋次が『土俵上でガッツポーズをした横綱は朝青龍以外にいない』と電話で話していた」とコメントしましたが、2008年3月場所では格下の朝赤龍に白鵬がガッツポーズをする姿が報じられています。2横綱については、あくまで中立な見解を保たねばならない横綱審議委員会の存在を疑問視する声も多い。小倉智昭氏は2009年5月場所後の内館氏の言動を「朝青龍に対するいじめ」と指摘しました
 横綱審議委員会における横綱推薦基準は次の通りで、いずれも出席委員の3分の2以上の多数決によって決議すると内規で定めている。
・品格、力量が抜群であること
・大関で2場所連続優勝した力士を推薦することを原則とする
・2場所連続優勝に準ずる好成績を上げた力士を推薦することができる
現在の委員は、
井手正敬 (元JR西日本取締役相談役 )2005年3月就任
内山斉 (読売新聞グループ本社社長) 2005年5月就任
大島寅夫 (中日新聞社代表取締役社長) 2007年3月 就任
北村正任 (毎日新聞社会長) 2009年1月 就任
六代目澤村田之助( 歌舞伎役者、人間国宝) 2003年7月就任
鶴田卓彦 (元日本経済新聞社相談役) 2003年3月 就任
福地茂雄 (日本放送協会会長) 2009年3月 就任
船村徹(作曲家) 2003年5月 就任
松家里明 (元日本弁護士連合会副会長 )2005年3月
宮田亮平 (東京芸術大学学長) 2010年3月(予定)
守屋秀繁( 千葉大学大学院医学薬学府長 )2007年3月
山田洋次 (映画監督、脚本家) 2004年1月
です。
 今回の事件で、横綱・朝青龍(29)が2月4日に、電撃引退したあと、横審の引退勧告が届きました。日本相撲協会が泥酔暴行問題の処分を協議するために、午前11時から両国国技館で開いた理事会の途中、師匠の高砂親方(元大関・朝潮)とともに朝青龍が呼び出され、弁明しましたが、九重親方らに別室に呼ばれ、「今回は厳しいぞ」と暗に引退を勧められ、自ら引退を決意しました。
 横審では委員の3分の2以上の表決で引退勧告を出すことができますが、今回は満場一致だったといいます。鶴田委員長は騒動を独自に調査したと言い、「被害者の写真を見たら顔には1ミリの傷があった。これで暴行を認めたわけではないが、未明まで酒を飲んでトラブルを起こした。これまでもいろいろありましたし」。問題行為の再発と、場所中の騒動自体が決定打となったようです。
 引退勧告の前に、朝青龍は引退を表明しました。横審は、相撲協会の理事会で、高砂親方、朝青龍から事情を聞き、その場はそれで終わるだろうから、そのあとの臨時横審で引退勧告を出し、いいカッコウをしようと思ったのでしょうが、横審前に引退届を出され、肩透かしを食らった形です。相撲協会もスピーデイではありませんが、横綱審議委員会もスピーデイさに欠けるようです。この人たちにスピーデイな正常な判断が出来るのでしょうか。今回の朝青龍を横綱への推挙を認めた横審委員は、自らも辞めるべきではなかったのでしょうか。潔さを示してほしいものです。

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