2008年11月29日土曜日

田母神元幕僚長論文

田母神俊雄・元航空幕僚長が「村山談話」など政府見解と異なる内容を含む論文をアパグループ主催の第1回「真の近現代史観」論文募集に応募し、最優秀藤誠志賞を受賞し、懸賞金300万円を得ました。このことから、内容が明るみに出て、田母神氏は幕僚長からただの空将に更迭され、113日をもって定年退職させられました。空将の定年は60歳。任命責任があると浜田防衛大臣は責任を追及されたりしています。浜田氏は田母神氏が定年退職にあたって貰う退職金6000万円の返納を申し入れましたが、田母神氏からあっさり断られています。

 論文内容は、インターネットでも全文読めます。崔映画監督などは、先日の「たかじんのそこまで言って委員会」で、論文といえるものではないと、完全にくさしていました。たしかに論文としては、データがあるわけでなく、本人の感想、一部考え方が書かれているのみです。参考までに、この選考会の委員長は、渡部昇一氏でした。寄せられた論文は、235点で、航空自衛隊隊員が94 人応募しました。

それでは、論文のどこに問題があったのでしょう。「わが国が侵略国家だったなどというのはまさにぬれぎぬだ」と主張したことが平成7年の「村山談話」などの政府見解に反するというものです。村山談話は、いろいろと大きな問題がありますが、周辺の国からは、言質にとられ、これに少しでも反することがあると辞任を迫られたりしています。問題は、村山談話は、「遠くない一時期、国策を誤り」と決めつけていますが、国策を誤った時期はいつかと問いますと、「断定的に言うのは適当でない」と逃げるなど、非常に曖昧です。一国の首相の正式談話であれば、あまりに問題があります。村山談話は、あくまで村山氏の個人的見解に過ぎないものが、正式見解のようなこととなっています。そして、今や入閣するときの踏む絵になった感があります。

次に問題になりますのは、防衛省内規に反して、上司に文書で届けることなく論文を発表したことです。しかし、これも更迭されるような問題なのでしょうか。3番目が、自衛隊幹部が村上談話に反する思想、歴史観を持っていることが問題なのか。これらが曖昧なまま唐突に処分だけを決めました。思想の自由は、憲法19条で保障されていますから、これで罰することはできません。したがって、今回の処分は、ある面で異常とも言えますし、ある面で、このように制服組が強くなれば、文民統制ができるのか疑問に思われます。以前は、自衛隊の幹部は、防衛大学以外の大学出身も多かったようですが、今や防大出身者で固められています。田母神氏は自衛隊の教育も担当していたことがあり、この方が問題が多いように思います。今回の件は、田母神氏を更迭すれば、終わりということではありません。国を守る人は、どうあらねばならないかを見直すいい機会です。現在の自衛隊で幕僚長といえど、戦争の経験はありません。ゆえに頭の中だけが異常に広がることのないよう望みたいものです。

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